第18回環境分析基礎講座―化学分析実習コース―
主催:(社)日本分析化学会関東支部
共催:東京理科大学・日本環境測定分析協会
信頼できる分析所であることを国際規格 ISO/IEC 17025に基づき第3者(認定機関)が認定するための審査に同行し,分析の現場で実技を観察しました。多くの分析所で熟練した分析技術者が,手際よく試料を取り扱っていました。しかし,化学分析の専門家としては,化学分析の基本が全く教育訓練されないままに,間違いだらけの操作で熟練してしまったことに驚きを隠し得ません。 分析所が提示した担当分析者とその上司(指導者)の学歴,教育訓練歴,経験年数とも,すべて申し分なく資格認定されています。作業マニュアルも何の欠陥もなく,作業もその通り実施していると信じきっています。
その昔(昭和30年代まで),分析化学の権威は化学分析の大家であり,弟子どもはそれぞれの流儀を継承していました。しかし,今では,分析化学の専門家であっても化学分析はできない研究者が増え,特に,多くの大学の分析化学の先生は,化学分析に関しては学識未経験者であり,「大鑑巨砲(大型分析機器)主義では大鑑の沈没とともに自らの手足で泳げないような分析技術者は海底の藻屑となろう。」と嘆いている名誉教授がいるほどです。そこで,日本分析化学会関東支部は,大学では教えてもらえなくなった化学分析の基本とその技を,実習(3日間とも各班にインストラクターがつきます。)を通して伝授いたします。ビーカーはなぜ外側から洗わなければならないのか? 安全ピペッターの装着の仕方は? 全量フラスコはどうかき混ぜれば均質な溶液が得られるのか? ノック式マイクロピペットの正しい使い方は? 滴定で変色の1滴前で滴下を止めるには? 標準液は小分けして使用しなければならないわけは? 天秤による測定で,空気による浮力補正はどうする? など,誰でも知っているようで,何が正しいかは教わっていない操作とその理由が身に付けられるように体験します。
本講座は,従来実施している機器分析講習会,エグゼクティブセミナー,エキスパートワークショップ,実務者講習会等を補完するもので,環境分析等に不可欠な化学分析の基本が学べます。受講者には受講証が交付されるほか,筆記・技能の修了試験合格者には修了証が授与されます。
会 期 平成24年1月18日(水)〜 20日(金)
会 場 東京理科大学 神楽坂キャンパス10号館[東京都新宿区市谷田町3-21-8,電話:03-5228-8317(田中龍彦),交通:JR総武線「飯田橋」駅下車,市ヶ谷寄り出口より10分]
第1日(1月18日)
9:00〜 9:05 開会の挨拶 (関東支部副支部長・(株)島津製作所)鈴木康志
9:05〜 9:55 分析の質の保証 (高田技術士事務所)高田芳矩
講習内容の趣旨説明に加えて,分析化学とは,分析者の心得と倫理,環境基準,ISO/IEC 17025に基づく試験所認定制度とその要求事項等について解説します。
10:05〜10:55 化学分析の基礎知識 (東京理科大学工学部)田中龍彦
量と単位,基本分析技術の基礎と実際など,化学分析を行う際の共通的な事項について,信頼できる測定値を得るために必要な化学分析の基礎知識を講義します。
11:05〜11:55 化学分析の基本操作 (エスアイアイ・ナノテクノロジー梶j川田 哲
試薬の調製,沈殿生成,ろ過,抽出,湿式分解,灰化等の試料前処理技術を分かりやすく説明します。また,汚染と損失についても講義します。
12:50〜17:20 (講義と実習)計量機器と器具の取扱い,試薬調製,試料前処理
(東京都立産業技術研究センター)林 英男ほか
天秤,全量フラスコ,ピペット,ビュレット等を用いる基本操作,器具の洗浄,キレート滴定のための試薬調製,試料前処理等を実習します。
17:30〜19:00 質疑討論・交流会 受講者,講師,実験インストラクター
第2日(1月19日)
9:00〜 9:50 環境試料の前処理方法(土壌試料)
(東京大学大学院新領域創成科学研究科)吉永 淳
土壌汚染問題が社会的に大きな関心の的となることが多くなってきた。土壌分析について,基礎的な試料の粗調製方法から,水や1 M塩酸による溶出試験である公定法及び酸分解・溶融による全量分析まで,いわゆる前処理法について幅広く平易に紹介します。
10:00〜10:50 環境試料の取扱いについて(水試料) (産業技術総合研究所)田尾博明
約10年ぶりに改正されたJIS K 0102「工場排水試験方法」の改正点と,水質の極微量金属を分析する際の分析前処理方法の要点について講義します。
11:00〜17:00 (講義と実習)容量分析の実際と終点検出法;キレート滴定による定量分析実験 (横浜国立大学大学院環境情報研究院)横山幸男ほか
酸塩基滴定,キレート滴定など容量分析の方法論を解説します。また,標準溶液の調製,容量分析用標準物質の取扱い,標定,終点検出,実試料測定など,一連の分析操作を通して高精度分析を体験します。試料中の分析目的成分の定量結果に基づき,技量が判定されます。
第3日(1月20日)
9:00〜 9:50 分析データの取扱い (東京都立産業技術研究センター)上本道久
分析データを取り扱うために必要である有効数字,信頼性用語等について分かりやすく講義するとともに,受講者の測定値を用いて分析データの評価方法を概説します。
10:00〜15:30 (講義と実習)試料*の前処理及び分析方法
(椛セ平洋コンサルタント) 野口康成・(滑ツ境管理センター)豊口敏之
*
希望する実習コースを下記のうちから選択してください(第2希望まで記入願います)。
実習1 環境試料(水):海水中のCOD分析
実習2 環境試料(土壌):土壌汚染対策法における試料調製,検液の作製及び六価クロム分析
実習3 有機物試料(プラスチック):プラスチックを含む試料の前処理及びICP-AESによる環境負荷物質とレアメタルの分析
(時間の都合により,実習内容は変更することがあります。)
15:40〜17:00 筆記試験及び総括 (東京理科大学工学部)田中龍彦
【受講申込要項】
受講対象者 初級者(分析実務経験が2年以内の方),基礎に立ち返って分析化学を学び直したい方,試験所の認定申請に際して担当の分析技術者が分析化学の基礎研修が修了していることの証明が必要な方。
※ 服装は実験に適するもの(白衣など,また作業に適する運動靴等の着用が望ましい)を,また,関数電卓,保護めがねをご持参ください。
受講料 日本分析化学会会員・共催学会会員6万円,会員外8万円。日本分析化学会会員には維持会員,特別会員,公益会員に所属する方を含みます。但し,特別会員又は公益会員の場合は1名,維持会員の場合は何名でも会員扱いとします。なお,納入された受講料の返却は致しませんのでご了承願います。
募集人員 40名(先着順に受付けます。)
申込方法 所定の申込書により,FAX又はEメールにてお申し込みください。折り返し,請求書,会場案内図等をお送りします。なお,テキストは前送の予定です。
申込先 〒141-0031 東京都品川区西五反田1-26-2 五反田サンハイツ304号
日本分析化学会関東支部〔電話:03-3490-3351,FAX:03-3490-3572,E-mail:hm_tanaka@jsac.or.jp〕