第16回環境分析基礎講座―化学分析実習コース―
主催:日本分析化学会
共催:東京理科大学・日本環境測定分析協会ほか
昔は,分析室には匠(たくみ)と呼ばれる分析の神様のような指導者がいて,徒弟制度のように次々と後継者が育成されていました。ところが,世の中が高学歴社会になるに従い,叩き上げの分析の神様がその神通力を失い,新卒の修士や博士は言うことを聞かなくなってしまいました。OJT的職場環境の崩壊です。さらに,定年退職やリストラがそれに拍車をかけて,躾(しつけ)をする指導者が消え,職場にモラルがなくなってしまうのではないかと心配です。仕事は増える一方で,多忙を理由に自己啓発も行われず,技術伝承もなくなりつつあります。大学においても,既に分析化学の実務教育がおろそかにされています。その結果,未熟な分析技術者が社会的に重要な仕事をすることになります。従って,分析の信頼性に関しては,何らかの規制が必要であると考えられるに至り,我が国においては,国際規格に基づく分析所の認定制度が各種整備され,分析所の審査が始まっています。残念なことに,多くの分析所の審査に出向いた技術審査員は,分析技術者の基礎的な部分におけるレベルの低さに,技術審査にならず,種々教育して,宿題を残して帰ってくるという現状にあります。
そこで,日本分析化学会関東支部は,実務者に対して,座学だけでは身に付きにくい基礎的な教育訓練を,実習(3日間とも各班にインストラクターがつきます。)を通して行うこととしました。本講座は,従来実施している機器分析講習会エグゼクティブセミナー,エキスパートワークショップ,実務者講習会等を補完するもので,環境分析等に不可欠な化学分析の基礎が学べます。受講者には受講証が交付されるほか,筆記・技能の修了試験合格者には修了証が授与されます。
会 期 平成22年8月25日(水)〜 27日(金)
会 場 東京理科大学 神楽坂キャンパス10号館[
第1日(8月25日)
9:00〜 9:05 開会の挨拶 (関東支部副支部長・(株)島津製作所)鈴木康志
9:05〜 9:55 分析の質の保証
(日本化学試験所認定機構)高田芳矩
講習内容の趣旨説明に加えて,分析化学とは,分析者の心得と倫理,環境基準,ISO/IEC 17025に基づく試験所認定制度とその要求事項等について解説します。
10:05〜10:55 信頼性のある分析・測定のために (東京理科大学工学部)田中龍彦
量と単位,化学計測の基礎,化学分析における校正等,信頼できる測定値を得るために必要な化学分析の基礎について講義します。
11:05〜11:55 化学分析の基本操作 (エスアイアイ・ナノテクノロジー梶j川田 哲
試薬の調製,沈殿生成,ろ過,抽出,湿式分解,灰化等の試料前処理技術を分かりやすく説明します。また,汚染と損失についても講義します。
12:50〜17:20 (実習)計量機器と器具の取扱い,試薬調製,試料前処理
(東京都立産業技術研究センター)林 英男ほか
天秤,全量フラスコ,ピペット,ビュレット等を用いる基本操作,器具の洗浄,キレート滴定のための試薬調製,試料前処理等を実習します。
17:30〜19:00 質疑討論・交流会 受講者,講師,実験インストラクター
第2日(8月26日)
9:00〜
9:50 環境試料の前処理方法(土壌試料) ((株)テルム)岡田 章
本年4月1日に改正土壌汚染対策法が施行され,土壌汚染に関する調査・対策の加速が予想されます。土壌分析について,基礎的な試料の取扱い,水や1 M塩酸による溶出試験である環境省告示公定法から,酸分解・溶融による組成・全量分析までの前処理法について幅広く平易に紹介します。
10:00〜10:50 環境試料の取扱いについて(水試料) (産業技術総合研究所)田尾博明
約10年ぶりに改正されたJIS K 0102「工場排水試験方法」の改正点と,水質の極微量金属を分析する際の分析前処理方法の要点について講義します。
11:00〜11:50 容量分析の実際と終点検出法
(横浜国立大学大学院環境情報研究院)横山幸男
酸塩基滴定,キレート滴定など容量分析の方法論を解説します。
12:50〜17:00 (実習)キレート滴定による定量分析実験
(横浜国立大学大学院環境情報研究院)横山幸男ほか
標準溶液の調製,容量分析用標準物質の取扱い,標定,終点検出,実試料測定など,一連の分析操作を通して高精度分析を体験します。試料中の分析目的成分の定量結果に基づき,技量が判定されます。
第3日(8月27日)
9:00〜 9:50 分析データの取扱い (東京都立産業技術研究センター)上本道久
分析データを取り扱うために必要である有効数字,信頼性用語等について分かりやすく講義するとともに,受講者の測定値を用いて分析データの評価方法を概説します。
10:00〜15:30 (講義と実習)試料*の前処理及び分析方法
(椛セ平洋コンサルタント) 野口康成・(滑ツ境管理センター)豊口敏之
*
希望する実習コースを下記のうちから選択してください(第2希望まで記入願います)。
実習1 環境試料(水):海水中のCOD分析
実習2 環境試料(土壌):土壌汚染対策法における試料調製,検液の作製及び六価クロム分析
実習3 有機物試料(プラスチック):プラスチックを含む試料の前処理及びICP-AESによる環境負荷物質とレアメタルの分析
(時間の都合により,実習内容は変更することがあります。)
15:40〜17:00 筆記試験及び総括 (東京理科大学工学部)田中龍彦
【受講申込要項】
受講対象者 初級者(分析実務経験が2年以内の方),基礎に立ち返って分析化学を学び 直したい方,試験所の認定申請に際して担当の分析技術者が分析化学の基礎研修が修 了していることの証明が必要な方。
※ 服装は実験に適するもの(白衣など,また作業に適する運動靴等の着用が望ましい)を,また,関数電卓,保護めがねをご持参ください。
受講料 日本分析化学会会員・共催学会会員6万円,会員外8万円。日本分析化学会会員には維持会員,特別会員,公益会員に所属する方を含みます。但し,特別会員又は公益会員の場合は1名,維持会員の場合は何名でも会員扱いとします。なお,納入された受講料の返却は致しませんのでご了承願います。
募集人員 40名(先着順に受付けます。)
申込方法 所定の申込書により,FAX又はEメールにてお申し込みください。折り返し,請求書,会場案内図等をお送りします。なお,テキストは前送の予定です。
申込先 〒141-0031
日本分析化学会関東支部〔電話:03-3490-3351,FAX:03-3490-3572,E-mail:hm_tanaka@jsac.or.jp〕